ひとりでいいもん。男より映画!と決めたもん。

映画観てる方が楽しいもん。癒やされるもん。年間映画400以上!映画依存症の私が独断と偏見と妄想により外れなし映画をご紹介します!

快楽以上の喜び。『セッションズ』

『セッションズ(2012)』
原題  The Sessions



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大江健三郎は小難しい隠喩でセックスは滑稽で醜いと語るし、
射精って言葉が何回出て来るんだよ!と突っ込みたくなる村上春樹もいる。
男の性は厄介だ欲望が男を卑しくするんじゃないの?というアービングに、もしこれがセックスというものなら未だバージンだなと思う私がいる。



マークは、笑顔が可愛くて、ユーモア、知性に溢れた魅力的な人。


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恥ずかしさも、恐れもある筈なのに、未知の世界に足を踏み出す勇気のある人。
自分の欲求に正直な人。

そんなマークの魅力を、主演のジョン・ホークス顔だけの演技で表現しています。
マークは自分の境遇を全く悲観していませんが、それまで幾つもの苦しみを乗り越え、どれだけのことを諦めてきたのだろうと思うと、そんなマークが愛おしくなる。

こ・こ・で・す!


この作品の肝は、観客がマークをどれだけ愛おしく思い、シェリルがこれからすることを、どれだけ好意的に見られるかにかかっている。
その点、ジョン・ホークスの演技は満点です!
ジェニファー・ローレンス主演の「ウインターズ・ボーン」では不気味な叔父さん役だったので、その振り幅にびっくりします。


セッションはどんなことをするかというと、つまりセックスです。


すみません。この部分をぼかしたままでは、大事なことが語れません。
それに性への欲求は、誰しも持っているものです。本作では「当然のこと」と、真っ直ぐに向き合っています。


なので私も、正面向いて語ることにします。


不快に感じる方がいたら、申し訳ありません。
セッションは、挿入して射精することをゴールとし、回数は6回と決まっています。これ以上になると、双方に情が湧くからだとか。
でもマークは(6回までいかずとも)ベッドでシェリルに優しく触れられて、特別な感情が芽生えます。
しかしアマンダもそうなんですが、
「好き」という気持ちだけでは一緒にいられないという、現実的で正直で悲しい思いがあります。だからアマンダは、マークから去って行きました。


シェリルといる時のマークはとても幸せそうですが、アマンダと同じく悲しい空気が微かに漂うのが切ないです。
目的が達成された時、マークが「思わず泣きそうになった」と言いますが、それを境にシェリルもある種の感情を抱きます。

「愛してる」

囁き合う二人。


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二人の感情の動きが、快楽以上の喜びを物語っていて、かなり衝撃を受けました。肉体ではなく、心が満たされる素晴らしい瞬間。
この瞬間の喜びを、こんなに爽やかに見事に描いた作品を知りません。
また自分自身の経験と照らし合わせてみて、これがセックスというのなら、私は未だにバージンなんだと泣きそうになりました。
そして大江健三郎先生も、村上春樹先生も、ジョン・アービングですら、実はこの喜びを知らないのでは?と愕然としました(あ、思い込みです。すみません)。


しかしシェリルは既婚者です。シェリルがマークの家以外で会ったこと、マークの詩が自宅に届いたことを、夫が咎めるシーンがあります。規約違反だろ?と(シェリルは個人情報を明かしてはいけません)。
この夫婦の他人とは違うセックス観が滲み、夫がこの仕事を許している理由が分かる。
セッションは6回ではなく、4回で終わってしまいます。互いの気持ちが、更に深まる前に。
ここにも衝撃を受けました!
セックス4回で、心を通わせあう二人に。
今まで私がしてきたことって、何だったのかな?
もの凄く陳腐な感想だと分かった上で申し上げます。セックスって、もっと丁寧に大事にすべきことで、そして得られるものって、もっと、もっと、もっと沢山あるんだと改めて思いました。
得られてないなぁ、私。

マークからセックス・サロゲートの相談を受ける神父が、名脇役のウィリアム・H・メイシーです。

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全ての俳優さんが、ぴったりと役にはまっていて本当に嬉しくなる。


「愛とは何だ?愛とは旅だ」


神父の言葉が、胸に残りました。
できれば私も、そろそろ目的地に到着したいものです。