ひとりでいいもん。男より映画!と決めたもん。

映画観てる方が楽しいもん。癒やされるもん。年間映画400以上!映画依存症の私が独断と偏見と妄想により外れなし映画をご紹介します!

今までで最も醜悪なシャーリーズ・セロン『ヤング≒アダルト』

ヤング≒アダルト(2011)』

原題  Young Adult


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ゴミが散乱した部屋、マスカラと口紅はどのくらい前からこびりついているのだろう?くすんだ肌、ひび割れそうな唇、悲鳴を上げながらヌーブラを引き剥がし、うるさい小型犬(ドルチェ)をベランダに追い出して、立ったまま食事をする。


届いたメールをプリントしようとするも、インク切れ。メイビスはインクに唾を落として、掠れたプリントを眺めて考える。冒頭、この一連の流れだけで、メイビスがどれだけ荒んだ生活をしているかが分かります。かなり痛々しい。しかも、「そんな私って、まだまだ素敵」と思っているから、質が悪い。正直、「モンスター」のシャーリーズ・セロンより醜いです。


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でも、こういうメイビス的な女性って大勢いると思う。
高校・大学時代は美人で人気者で、社会に出てから「ちょいと私って、キャリアウーマン(死語?)」って思える場面があるけど、その後ぱっとせず。
都心のマンションに一人で住んで、小型犬か猫を飼って。


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でも未だに、美しさの欠片が残っている(つもり)から、そこそこモテて。
でも行きずりの男と関係を持つけど、恋人にはなれなくて。
寂しいけど、満たされないけど、何が必要なのか分からない。つか、分かりたくない。分かったら、自分のアイデンティティが揺らぐ!
で、うっかり田舎に戻ると、同年代の友達は結婚してて子供が2~4(!)人いて。
太っておオバさん体型になって、日々の生活に追われて、お化粧もお洒落もしていなくて、自分より確実に10歳は老けて見える。
けど、何故だか、何故だか、何故だか、彼等が自分より幸せそうで、満ち足りているように思える

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ちょ、ちょっと待って!私の生き方は、間違っていた?自分の価値観が大きく揺らぐけど、田舎の人達のようには、絶対になりたくない!みたいな、そんな女性。
って、ここまで書いて来て、私じゃん!?と思って愕然。メイビスの生活環境や生い立ち(勿論容姿も!)は、違うけど、田舎→都会→田舎の私と、ほぼ、ほぼ、思考回路は同じだと思います。


メイビスの価値観は、田舎で揺らぎます。なので無理矢理、自分が間違ってなかったと証明したくなる。それが、高校時代の元彼とヨリを戻すというもの。


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元彼は奥さんとラブラブで、子供も可愛がってるのに、何故か「元彼は不幸、田舎から逃げ出したがっている!」と思い込む。
エステに通いドレスアップして、元彼を振り向かせようと必死になる。
両親や高校の同級生にも、そう吹聴して回る。どう見ても、病んでるんです。あまりに痛々しすぎて、観るに耐えません。
メイビスの思考回路は、自分が書いてるYA小説そのままなんです。高校時代の、輝いていた頃の自分のまま。大人になれない、女。
でも、なんか、そんなメイビスの中にも、私を見たような気がする。YA小説、書いてないけど。
そんなメイビスの前に、高校時代の同級生:マット(パットン・オズワルト)が現れます。マットは高校時代にゲイと間違われ、集団リンチを受けました。その為、下半身に障害を持っている。メイビスは、マットの冷静で捻くれた分析を拒否し続けます。けど、決定的な事件が起こる。


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本作を好きだと思ったのは、メイビスの生き方を否定してないからです。
今までの喪失→再生系映画だと、自分を理解してくれたマットと結ばれて、強引に幸せみーつけた!的な着地となる筈なんです。
本作はそうじゃない。一瞬、メイビスのアイデンティティは揺らぎますが、マットの妹=田舎に住む者の鬱憤代表に説かれて(励まされて)、また元の都会に戻って行きます。
一夜を共にして心を通わせた、マットも捨てます!励ましてくれた鬱憤代表には、「あんたには、都会は似合わない」と突き放します。流石、メイビス!田舎なんかきらーい!私は綺麗!私は格好良い!才能がある!だから、田舎は似合わない!
例え、メイビスが虚飾を好んで、生活が荒んで、痛かろうと、醜かろうと、でも、それがメイビスなんもん。このまま、行けばいいんじゃね?だって、幸せって人それぞれじゃん。
みたいな。





見ている間中、ずっと苦笑いが止まりませんでした。だって、メイビスの中には、私がいるんですもの。私はメイビスほど自己暗示能力がないので、田舎の幸せ者の笑顔にたじろぎますが……。
シャーリーズ・セロンは、ほんとボロボロなんですが、その汚い普段着でさえ格好良く、ドレスアップしたら、当然美しく。女性の多面性を、見せられたような気がしました。

YA小説のゴーストライター(厳密にいうと、ゴーストではないけど。原案者が有名なので、実質的にはそうと言える)とか。YAは日本でいうと、「TL(ティーンズ・ラブ)」でしょうか。