ひとりでいいもん。男より映画!と決めたもん。

映画観てる方が楽しいもん。癒やされるもん。年間映画400以上!映画依存症の私が独断と偏見と妄想により外れなし映画をご紹介します!

評価の低い本作を全力で擁護させていただきます!映画「サイン」

不思議な体験をしました。まずは、そのお話から始めたいと思います。
ちょっと長くなりますが、お付き合いくださいませ。



● 20歳頃、読んだ本に書いてありました。ヒモが女性を殴る時、顎を軽く擦る程度にパンチする。顔に傷がつくと、彼女達の商売に影響するから。顎を軽く殴られると、脳が揺れて、所謂脳震盪のような状態になる。こうしてヒモ達は、暴力で女性をコントロールするのです。


● 28歳頃、 元バンタム級チャンピオンの薬師寺保栄さんが、TVで言っていました。パンチは真っ直ぐ打っても、ダメ。曲線的に打たないと、 相手は倒れない。

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● 30歳頃、メンフィスの危険な場所に住んでいて、夫には「1人で出歩くな」と言われていました。アジア人が少ない地域で、いてもタイや中国人の労働者。小綺麗な格好をしてるアジア人の私は、好奇の的でした。それに、隣には崩れかけの家があって、そこではドラッグの売買が行われていたんです。でも、ちょっとなら大丈夫だろうと思ったんです。アパート直ぐ傍の、スーパーに向かったんです。でも妙な大男に絡まれてしまい……。大男に上に乗られて身動きできなかったんですが、その時に上記2点が頭に浮かんだんです。

「顎を擦るように、曲線的にパンチせよ!」


当時、筋トレもしていたので、腹筋で反動をつけつつ、男の顎に右フック!!!!!
男がフラついた隙に、逃げました。人って窮地に立たされると、とんでもない力がでるもんだね。そんな軽口を叩く私に、夫は大激怒でした。


それから直ぐに本作を観て、全ての意味を悟ったのです。


「サイン(2002)」
原題 Signs


※俄然ネタバレ&俺流解釈


(あらすじ)
グラハム(メル・ギブソン)は妻の事故死を境に牧師をやめ、弟のメリル(ホアキン・フェニックス)、2人の子供達と、トウモロコシ農場をやりつつ、静かに暮らしています。
グラハムは妻の凄惨な死を堺に、信仰(神)を失っていました。この世は無意味だ。そんなことを考えながら、生活しています。そこに宇宙人が現る!


サイン① グラハム妻、最後の言葉「Swing away(振り切って=フルスイングして)」「See(良く見て)」 
サイン② 治らない息子の喘息
サイン③ (家の中)何度叱っても、娘はテレビの上にコップに入れた水を置くことを止めない&壁に飾られたメリルの栄光=バッド
サイン④  ミステリーサークルができて、犬が凶暴化。隣人達はどこか遠くに引っ越して行くが、グラハム達は自宅に残る。



隣人達が避難して周りに誰もいなくなっても、グラハム一家は農作業をして過ごします。そこに宇宙人らしき影が!

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流石に怖くなってTVを観れば、どうも宇宙人は地球侵略をしに来て、口から毒まで出すらしいと分かります。


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頭にアルミ箔を巻くと思考を読まれないらしいとか、どうやら宇宙人は水に弱いらしいとか、独自の情報を入手。グラハム一家は、戸締まりを強化する。

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でもどこからか宇宙人が進入して来て、息子に毒を噴射。けれど息子は大丈夫だったんです。丁度、喘息の発作が起こって、気管が狭窄してたんでしょうね。けれど宇宙人は、容赦なくどんどん入って来ますよ。そんな時、グラハムの脳裏に妻の言葉が蘇ります。


「See(良く見て)」
「Swing away(振り切って)」


はっとして部屋を見渡すと、TVの上のコップの水、そしてバッドが目に入ります。グラハムはメリルにバッドを投げ、妻の言葉を叫びます。


「Swing away(フルスイングしろ)!!」


メリルは言われたように、宇宙人の頭をフルスイングします。するとよろけた宇宙人が、TVに激突。コップが倒れて、水が宇宙人にバシャリ。なんだか苦しみ出す宇宙人。

どうやら、宇宙人の弱点は水で正解だったらしいです。メリルがコップの水をスイングしまくって、宇宙人を撃退します。

どうやら、隣人達も宇宙人撃退に成功したらしく、平穏な日々が返ってきます。そして牧師に戻ったグラハムの晴れやかな笑顔で終わります。



私は「シックスセンス」より、本作の方が好きです(シックスセンスは、冒頭にブルース・ウイルスからのあざとい手紙をつけないと成立しないもん)。

しかしネット上の評価は散々です。調べてみたら、だいたい二つの理由に絞られるようです。


1)宇宙人がしょぼい。
2)サスペンス仕立てなのに、ラストにどんでん返しがない。


あー、なるほど。と思いました。本作をSF映画と観た場合そんな感想になるし、ホラーと観た場合もサスペンスと観た場合も、なんか物足りない、そんな感想になると思います。



でも私は本作を、SFとかサスペンスとかホラーとか、ちっとも思いませんでした。今まで信じて来た「神」を失ったことでアイデンティティが崩壊した男が、宇宙人襲来をきっかけにして神の存在を感じ、昔の自分を取り戻すヒューマンドラマだと思います。



点在する間抜けなエピソードを強引に回収していって~、からの~力技のラストは、見事としか言いようがありません。



その肝心のしょぼい宇宙人ですが、グラハム一家以外が目撃したシーンは描かれてません(TVでチラと出る以外)。
あくまで宇宙人VSグラハム一家です。この、
水が弱点なのに防水スーツすら着てない、ビジュアル的にしょぼい宇宙人、グラハム家だけに現れている可能性もあります。いや、本当に宇宙人は現れたんでしょうか?
はっきり言いましょう。
あの宇宙人は宇宙人にあらず。あの宇宙人は、メタファーなんです!グラハムの心に芽生えた迷い、迷うことで生じた恐怖の象徴なんです。だから見た目、「しょぼい」んです。



そしてグラハムは、妻の言葉の意味をようやく理解し、そ迷いと恐怖をやっつけて、信仰心を取り戻す。


そう!自分を取り戻すのです。だから、グラハムの晴れやかな顔で終わります。


なるほど。なんだ神の存在とか、宗教的な話なのかー!いえいえ、ちょっと待ってください!
本作の中に神は存在しません。


少なくとも、私達には見えません。私達はグラハムの中に存在する神の喪失と、復活を見るのみです。

ん?ちょっと待てと思いませんか?何かおかしいですよ。


つまり本作は、「神はいない」のに、勝手に人間どもはその存在を信じ、失ってはやさぐれて、勝手に神の啓示だとか言って、出来事に意味を持たせて幸せになったりするんだぜ。プゲラw


ぶるぶるします。ええシャマラン監督の皮肉に、ぶるぶるします。


冒頭の私の体験記に戻ります。私はその事件の後、メンフィスを捨てて帰国する決心をしました。もしかしたらあの巨大な男は、本作の宇宙人と同じだったのかも知れませんね。


ちゃららら、ちゃららら、ちゃららら、ちゃー、たらんたらん♩

youtu.be


PS シャラン監督も出てるよ(重要な役で)。


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